研究概要 |
1.染色体上のいくつかのマーカーで測定された患者と健常者のCAリピート頻度分布の違いから、遺伝性疾患に関連する遺伝子座位を特定するという接近法に基づき、明星大学の広津千尋教授、国立精神保健研究所の稲田俊哉氏、北尾淑恵氏らとの共同研究を行った。特に、2つの近傍座位におけるCAリピート頻度分布の同時解析(haplotype analysis)においては、3因子交互作用を無視した従来の解析法の問題点を指摘し、新たな検定を提案した。提案した検定は、従来の考え方になかったいくつかの対立仮説を想定したものであり、この検定によって、遺伝性疾患とCAリピート頻度分布との関連に新たな解釈ができる可能性が示唆される。また、検定を行うための統計量の分布の計算手法に関しても、データの特徴を考慮した新しいアルゴリズムを提案した。これらの成果は、論文(Biometrics, 2001)に発表するとともに、国内外の学会で報告を行った。 2.2元分割表における行と列との関連解析に関して、従来よく用いられている検定手法のひとつであるフィッシャー正確検定の、p値計算アルゴリズム(ネットワーク・アルゴリズム)の改良法を考案した。提案する方法は、従来の方法に比べ、より多様なデータの効率的な計算を可能とするものである。この成果は、論文(Journal of Statistical Computation and Simulation, to appear)に発表するとともに、学会でも報告を行った。 3.アレル頻度データに対するHardy-Weinberg則(平衡仮説)の検定は、集団遺伝学のもっとも重要な問題のひとつであるが、この問題に対し、2の研究結果を応用したアルゴリズムを提案した。提案するアルゴリズムは従来の方法に比べて、数倍から数十倍の効率での計算を可能とするものである。また、その副産物として、アルゴリズムの本質部分である最適化問題に対する、近似解、厳密解が求まっているが、これらは初期段階でのデータの解釈において新たな手がかりとすることができる。この成果は、テクニカルレポートにまとめ、現在投稿中である。また、国内での学会、研究会においても報告を行った。 4.高次の分割表からのサンプリングの問題に関し、従来の手法の問題点を指摘し、特にいくつかの水準数が限られた3元分割表に対して、改良法を提案した。この結果は、テクニカルレポートにまとめ、現在投稿中である。また、14年度8月にドイツでの開催が予定されている国際学会(compstat 2002)において報告が決定している。このテーマは、14年度も引き続いて研究を行う。
|