当初の計画では、現実環境と仮想環境のインタラクションのためにビデオキャブチヤを使う予定であったが、研究を実際に行うにあたり、ネットワーク通信機能を持った非接触ICカードが利用できることになった。そこで、このICカードを現実環境と仮想環境の間を結ぶ情報の媒体としてを用いることにした。 本研究では、現実環境として特に博物館という場を想定している。そこで、まずICカードやサーバに、どのような情報を記録すべきかを決めるため、博物館の展示、および評価に必要な情報の整理を行った。その上で、ICカードへの情報記録フォーマットを決定した。ICカードに記録した情報はさまざまであるが、例えば以下のような情報がある。 1.利用者の属性 大人/子供、説明のレベル、興味を持っている分野、などの情報である。これらの情報をICカードを用いて現実環境から仮想環境へ持ち込むことで、展示を利用者に合わせて変化させ、より分かりやすい展示を行うことが可能となった。 2.展示を見た履歴 利用者が、現実環境および仮想環境での展示のうち、どの展示を見たかの履歴である。これを利用することで、次にどこを見ればよいかという、ナビゲーションが可能となった。また、利用者が展示を見て回った経路情報としても利用でき、上記の利用者の属性とあわせることで、博物館の展示評価にも役立てることが出来た。 非接触ICカードを用いた展示システムは、東京大学総合研究博物館で2002年1月から2月にかけて行われた"デジタルミュージアム3"などの実際の展示会で運用され、現実環境と仮想環境を結び付けたシステムが、博物館での新たな展示手法として有効であることが確認できた。
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