研究概要 |
申請者が提案しているネットワーク遅延が動的に変化する状況を想定したユーザ操作時間公平性保証方式(ICEGEM)の拡張として,以下の2点について基礎的な検討を進めた。 1.セキュリティ向上:ICEGEMはクライアント-サーバ型の協調アプリケーションにおいて,クライアントから報告されるユーザの操作時間の報告に基づいてサーバ側で公平性保証のための調停を行う。ICEGEMではユーザプログラムが改ざんされた場合,クライアント側から報告されるユーザ操作時間が偽証され,サーバ側での調停が正しく行えなくなってしまう。この問題に対し,ネットワーク中継装置を拡張した専用ハードウェアを用いて応答時間を判定し,クライアントによる虚偽メッセージの防止手法を検討した。具体的には,ネットワーク中継装置が通過するICEGEM使用メッセージの通過時刻を逐次サーバに報告する方式(報告形)と,中継装置自身がメッセージの通過時刻に応答時間を測定する方式(測定型)の2つを提案し,有効性を検討した。この結果,測定型が安全面,コスト面,信頼性の点から測定型が優れていることを明らかにした。 2.モバイルアドホックネットワークへの拡張:モバイルアドホックネットワーク(MANET)環境ではネットワークを構成する端末が移動することによってネットワークのトポロジが変化する。このため,端末間の遅延差を隠蔽するための機能を有する端末のネットワークトポロジ上の位置が適切に保たれる保証がない。今年度はトポロジの変化に応じてネットワークトポロジの中心に近い端末が遅延差の吸収を行うように,遅延差吸収機能を担う端末を交代させる方法を提案し,MANETのルーティングプロトコルとしてDSR(Dynamic Source Routing)を用いた場合について,その有効性をシミュレーションに基づいて明らかにした。
|