研究概要 |
本年度においては、我々が提案する高速球面調和関数変換のアルゴリズムに関して以下のような研究を行った。 (1)高速変換の前処理における、誤差解析の手法を構築し、誤差の制御を実現した。重み付けした行列ノルムによる誤差の評価により、誤差がアプリケーションに与える影響の特性を反映できるようになった。また、対角行列によりスケーリングした一貫性不等式を用いることにより、安定に誤差制御が行えるようになった。 (2)同じく前処理における、安定性の解析を行い、その最適化の手法を提案した。標本点の選択と数値的安定性との関係を明らかにし、数値的な安定性を評価するいくつかの指標を提案した。またそれらの安定性指標を高速に計算する手法を提案し、実用的な時間で前処理ができるようにした。 (3)高速変換に用いる高速多重極子展開法(FMM)の改良を行い、前処理と変換の両方に関して高速化を実現した。特異値分解をボトムアップに適用することにより、従来の方法よりも高速にFMMを構成する方法を提案した。また、変換行列を疎行列化して、演算量をさらに削減できることを示した。 (4)以上の研究成果を踏まえ、C言語による前処理プログラム(約66,000行)と、fortran90による実行プログラム(約6,000行)を作成した。さらにそのプログラムを気象シミュレーションのプログラムに組み込み、十分な精度が得られていることを確認した。 若干の修正や改良を加えた上で、本年度内には高速ルジャンドル陪関数変換の実行プログラムをFLTSS(Fast Legendre Transform with Stable Sampling)として一般に公開できる見通しである。
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