研究概要 |
版木・紙・インク・ばれんを用いた版画操作の再現により版画画像を合成する仮想版画において,仮想空間内でのインク付着の物理モデルの検討と実装を行った.まず実際の版画において,インク濃度・摺り(ばれん操作)の圧力・インク付着量の間の関係の実験・観察を行った.実験結果からこれらの関係を示す偏微分方程式を構築し,この解を求めることで実験に基づく新たなインク付着物理モデルを提案した.これは多版多色摺りでの版画画像の品質向上や,より現実に近いばれん操作感覚を実現し,従来のインク付着モデルでは困難であった仮想版画における浮世絵の再現を可能にした. この結果を得て,近年注目を浴びている文化財のデジタル保存の一つとして,浮世絵のデジタル保存に関する基礎検討を行った.ここでは浮世絵を単に画像としてデジタル化するのではなく,仮想版画手法に基づいて絵師による画工,彫師による彫工(版木作成),摺師による摺工という日本の伝統文化である浮世絵製作過程全体をデジタル保存することを提案した. また筆圧ペンに基づくユーザインタフェースに関する基礎的検討も行った. なお本年度の研究実績に関して,国際会議で3件,国内会議で2件の報告を行った.
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