研究概要 |
仮想版画は,実世界での版画作成過程をコンピュータで構築した仮想空間内でシミュレーションすることによって,容易に手作りの雰囲気を持つCG木版画画像を合成する手法である.その中で本研究では仮想版画の物理的検討やユーザインタフェースの改良を行うことによって,より現実の版画に近い画像合成を実現することを目的とする.多くの人に使いやすいシステムを実現するだけでなく,将来的には日本固有の木版画である浮世絵の電子保存(デジタルアーカイブ)も視野に入れている. そこで昨年度に検討した仮想インクの物理モデルの仮想版画システムへの実装を行った.その結果,仮想インクの振る舞いや摺り上がりのシミュレーション精度が向上し,従来の仮想版画では困難であったぼかし摺りや重ね摺りなどの実際の版画で用いられる様々な摺り技法を実現した.これにより多色多版木版画である浮世絵を仮想版画で合成することが可能となった. また,彫刻操作を筆圧感知式ペンタブレットで行うことができる新しいユーザインタフェースを開発した.これにより切削の深さや面に対する角度をペン操作圧力の強弱によって直接的に制御できるようになり,現実の彫刻に近い操作感覚で仮想彫刻や版木の作成が可能となった.これはコンピュータ操作に不慣れなCG初心者のみならず彫刻・版画の熟練者にも有用である.今後,摺り操作にも感圧式のユーザインタフェースを採用することにより,版木作成から摺り操作までの作成過程に基づく浮世絵の電子保存が実現できると思われる.
|