研究概要 |
本年度は,動的にネットワーク構成の変更が可能なMesh with Separable Buses(以下MSB)及び,動的にネットワーク構成の変更ができないMesh with Partitioned Buses(以下MPB)の,2つの並列計算モデルを対象とした研究を行った.具体的には,n^2個のプロセッサから成るMSBの任意の1命令を,より少ないm^2個のプロセッサを用いて模倣する場合(m<n), m≦n^{3/4}の範囲であれば,MSBとMPBのどちらを用いても同等の性能で,かつ理論的に最適のパフォーマンスが得られることを示した. MSB及びMPBは,各行各列にブロードキャストバスが付加された二次元メッシュ結合型並列計算モデルである.MSBに配置されるバスはSeparable Busと呼ばれ,プログラムの実行中,長さの異なる幾つかのセグメントに動的に分割可能である.一方,MPBに配置されるバスはPartitioned Busと呼ばれ,あらかじめ決められた区間で静的に分断されている.そのブロードキャストバスの能力から,MSBはMPBに比べて格段に計算能力の高い並列計算モデルである. 本研究で考察した「ある並列計算機を,より少ないプロセッサ数の並列計算機で模倣する」という問題はScaling-Simulationと呼ばれ,実用面で重要である.なぜなら,並列計算では非常に多数のプロセッサ数を仮定されることが多いが,実際には有限個の限られた数のプロセッサしか用意することができないからである.今回示した結果では,模倣する側のプロセッサ数が少ない場合,動的にネットワーク構成が変更できるモデルを用いずとも,同等の性能で,かつ理論的に最適のパフォーマンスを得ることができることを示し,その具体的な境界条件を数学的に示した.
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