研究概要 |
自動設計システムは,「標準ベンチマーク集合に対してどれだけ高い性能を発揮するか」で評価されてきた.ところが,ベンチマーク集合は,定数個のテスト問題しか含んでおらず,しかも各問題のサイズnは固定されているため,テスト問題を意識したアルゴリズム開発という不正を防止できなかった.本研究では,(1)t(n)の計算資源量では解が求まらないことが理論的に証明された「難しい関数」を人工的に作成し,(2)その関数をテスト問題として使うことで,不正が根本的に不可能な性能評価法を開発する.また,入力ビット数nを自由に設定できるようにして,ビット数の違いによるシステムの性能差を漸近的に評価できるようにする。 平成13年度は、主として(1)に関して研究を進め,次の結果(i),(ii)を得ている.これらの成果は,(2)の自動設計システムの性能評価法の開発の鍵になると期待できる. (i)計算理論分野の基本的モデルであるセルオートマトンに対して,時間計算量の階層定理を証明した.本結果は,t'(n)≠O(t(n))を満たす任意の関数t'(n), t'(n)に対し,t(n)時間では解が求まらないが、t'(n)時間なら解が求まるという(人工的な)難しい関数の存在性を理論的に裏付けたことになる.この結果は,国際学術雑誌Theoretical Computer Scienceにて公表した. (ii)計算量に関連する研究として,決定性(直列)計算量と交代性(並列)計算量の関係を理論的に探求した.その結果,t^2(n)時間の交代性計算は,t(n)時間の決定性計算と等価であることが分かった.本結果は,モルドバ共和国で開催された「機械・計算・万能性に関する国際会議」にて公表した.
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