研究概要 |
メタヒューリィスティックスの並列分散処理として,解空間の地形情報を考慮した並列遺伝アルゴリズムの実行手法を開発した.複数の遺伝アルゴリズムプロセスが独立して実行を進めて行くが,解の改善が見られなくなったら(局所解での飽和状態),他のプロセスに協調を求める。協調は解空間の構造を意識して次の3種類の中から選ばれる.一つ目は,協調相手が探索している空間の染色体を受け取ることで,一緒に同じ領域の探索を進める.二つ目は,協調相手から複数の染色体を受け取り自分自身の全ての染色体との交差を実行することで,協調相手の解空間と自分が探索していた空間との間の新しい空間の探索を試みる.最後は,自分の染色体をランダムに新しく生成することで,新たな解空間の探索を試みる(厳密には協調は行っていない).計算機実験の結果,解空間を意識した協調手法の有効性を確かめた.また,タブー探索の分散並列処理の基本アルゴリズムを開発している.アルゴリズムはPCクラスタ上で通信コストを考慮した協調を行う. 配送経路問題における自律分散最適化においては,グラフ理論におけるアサイクリックグラフの連続的生成プロセスを利用した協調処理手法を提案した.サブシステムをノード,通信路を辺とみなすと,配送経路システムは一つのグラフで表現できる.この時,サブシステム間の協調は,グラフの辺の上でのやり取りとみなすことができる.すなわち,複数のサブシステムペアの協調はグラフのマッチングで表現される.一方,システムを構成するグラフの反転グラフを考えると,元グラフのマッチングは反転グラフの独立点集合となる.また,反転グラフの各辺に方向付けを行うことでアサイクリックグラフを作成すると,ソースノード集合は一つの独立点集合となる.すなわち,反転グラフを有向化することでアサイクリックグラフを連続的に生成すれば,それは元のグラフのマッチングで表されるシステムの協調ペアの集合を連続的に生成することになる.本研究では,局所通信のみで分散的にアサイクリックグラフを連続的に生成するしくみを提案した.計算機実験により提案手法の有効性を示した. また,生産システムの自律分散スケジューリングを効率的に実施するために、時間ペトリネットによるモデリング手法を提案した.提案手法は,協調アルゴリズムの正当性の証明,システムの性能評価を行うことが可能である.
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