研究概要 |
本研究課題では,生物のような動的認識機構による柔軟で迅速な認識能力をもつモデルの構築を目標としているが,本年度は,1.入力に応じてシステムパラメータを変化させるような時変モデルを開発し,2.新モデルの基礎能力検証を行って、カオス的な振舞いをする迅速な認識機構への拡張可能性について検討した. 1.入力依存型時変ニューラルネツトの開発: はじめに、フィードバック構造をもたない従来の階層型ニューラルネットモデルをもとに,入力に応じてシステムパラメータを変化させる新しいニューラルネットモデルを開発した.新モデルは,入力の時間的変化に対応して,ネットワーク構造(ネットワークの入出力関数)が変化する間接的な時変システムである.この入力依存型改変ネットワークにより,入力毎に独自の関数をネットワークに学習させることが可能となり,従来のネットワークよりも,さらに複雑かつ非連続な場合も扱うことが可能となった. 2.新モデルの基礎能力検証と拡張可能性の検討 新モデルをパソコン上にインプリメントし,種々の計算機実験を通して基礎的な能力について検討した.とくに,従来学習法では新知識の学習とともに忘却されてしまう過去の記憶を保護しつつ,新知識を獲得することが可能な新しい「重ね書き」学習法を提案し,モデルの有効性を示した.また,従来の階層型ネツトワークを誤差逆伝播法で学習した場合よりも,提案モデルの学習能力が高いことを理論的に証明した.さらに,カオスダイナミクスとの関連を考察するために、リカレント型ネットワークのダイナミクスを制御する種々の手法を提案して,その統計的な特徴を明らかにし,新モデルの動的認識機構への拡張可能性について検討した.
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