研究概要 |
今年度は、本研究の最終年度として、平成13年度に実施した同時通訳プロセスに関する基礎的研究をもとに、独話を対象とした英語から日本語への同時通駅機のプロトタイプシステムLINASを実現した.実際の同時通訳者のように、講演用に準備された原稿や資料などをもとに、通訳に必要な言語情報をあらかじめ獲得することにより、高い同時進行性を備えた通訳処理を実現することができる。 本システムの実現のために以下の項目の研究を実施した。 (1)漸進的構文解析の効率化:システムにおけるモジュールとして漸進的構文解析を採用した。話者発話に追従できるように、統語範疇間の到達可能性を活用し、単語間の依存関係を実時間で明らかにするための機構を開発し導入した。この結果、話者発話速度を超える漸進的構文解析が可能となった。 (2)漸進的訳文生成手法の開発:LINASでは、話者発話に追従した訳文生成を可能にするために、訳文の品質以上に訳文作成タイミングを優先し、倒置やいい直しを活用した訳文生成手法を開発した。一概に倒置といってもその生起位置については、特定の傾向が存在するため、それについて調査し、その結果に基づいて訳出方法を定めた。 LINASは、UNIXワークステーション上にCommonLispを用いて実装した.音声合成器は市販のソフトウェアによって実現されているが、現在のところ,音声認識はWizard of OZ方式を採用している.LINASを用いた評価実験の結果,容認可能な品質を備えた日本語訳文を即時的に生成できることが明らかになった.これらの一連の研究を通して、独話を対象とした英日同時通訳の実現可能性を確認することができた。
|