人間の視覚システムには、空間的に隣接した領域において、似通った特徴を持つ領域をグループ分けする群化の機能が備わっている。濃淡値の似通った領域で画像を分割する領域分割の機能は群化の機能の一例である。本研究では、人間の視覚システムの理解を目的として、群化の機能を実現するモデルを提案した。まず、領域分割の機能に的を絞り、生物学的な動機付けから、神経軸索における信号の伝播の様子を記述した反応・拡散モデルに基づくモデルを提案した。このとき、提案モデルにおける拡散係数に対してTuring条件と呼ばれる特別な条件を課した。さらに、提案モデルが、いくつかのパラメータを変化させるだけで、領域分割だけでなく、エッジ検出の機能までも実現可能となることや、領域分割の機能を応用することでランダムドットステレオの対応問題まで解決可能となることが示された。エッジ検出のモデルとしては、これまで∇2Gフィルターや、その近似であるDOGフィルターがよく知られている。DOGフィルターは2種類の程度の異なるぼかし処理、すなわち異なる拡散係数を持つ2つの拡散モデルに基づいている。本研究で提案したモデルは、DOGフィルターに反応項を付加した拡張形となっている。興味深いことに、DOGフィルターは、これを2つの拡散モデルとしてみたとき、それらの拡散係数の関係がTuring条件となっており、提案モデルにおいて課された条件が従来のモデルによって裏付けられた結果となった。提案モデルを2種類の静止画像に対して適用し、領域分割やエッジ検出処理を行い、従来のモデルに対してより好ましい性質を持っていることを確認した。さらに、連続的に視差が変化するランダムドットステレオ画像に対しても、提案モデルを応用し、この場合でも提案モデルが有効に機能することを確認した。
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