研究概要 |
本研究では,複数のビデオカメラで得られた集団人物像から,その集団の状態や集団としての動きを抽出・計測し・集団行動における協調的・競合的な動きを定量的に解析すること,また,その結果に基づいて特徴的な動きパターンや特異な動きを検出することを目的としている. 本年度は,我々のグループで開発した優勢領域と呼ぶ一種の動的勢力範囲に基づいて、おもにスポーツ競技映像から攻撃シーンなどの特徴的な動きパターンを検出する方法の開発,および,集団的な動きをシミュレートするための集団行動モデルの開発を行った.前者では,優勢領域がある時刻における個々の人物の空間的な勢力範囲であるのに対して,それを時間軸方向に拡張し、時空間的な勢力範囲(占有領域とよぶ)としてモデル化した.この占有領域はある時間帯における集団の特徴的な動きパターン,例えばスポーツ競技で言えば試合の展開やチームの特徴を表したものであるといえる.また,この占有領域および優勢領域の形状変化からスポーツ競技における得点シーンや得点チャンスシーンなどの自動検出が可能であることを実験的に確認した.後者では,群衆行動や人の流れをシミュレートするため,個々の人物の基本的な行動モデル(例えば,障害物回避やすれ違い,周りの人物に追従して移動するモデルなど)を作成し,集団行動のシミュレーションシステムを試作した。その結果,例えば多人数が通路を行き交うような場面のおいて,お互いに衝突しないような回避行動や,同じ方向へ移動している人がいればその人に追従して動くことによる人の流れが,自然な動きで実現されていることを確認した.その他として,集団人物像データの収集や優勢領域を計算するための到達時間パターンの改良を行った.
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