1.語彙情報記述のための素性構造策定 従来の言語学的研究、工学的言語処理に共通する問題点の中から理論言語学的に意味があり、また工学的にも早急の解決が望まれている現象を調べてみると、複合述語形成の精徴化が急務の課題であることがわかった。 そこで、主辞駆動句構造文法(HPSG)で仮定されている素性構造を参考に、主要な複合述語の語彙情報をいくつか記述してみると、語彙項目の階層関係に着目することにより、複合に関する一般的制約が語彙情報に基づいて明示的に記述できる見通しが得られた。(2001年6月の日本認知科学会で発表) 2.素性に基づく文法のための辞書ツールの作成 研究用データベース構築の予備調査を行ったところ、計画当初の水準より精度の向上した形態素解析に依ることで、静的なデータの蓄積を行う必要がなくなり、むしろそのために必要な言語情報の動的操作に適したツールを整備した方が、複合述語間の関連性を見極めるには都合がよく、計画も効率的に遂行できることがわかった。 そこで、素性に基づく文法のための辞書ツールの作成にかかり、整備の進捗およびその成果の一部を公表した。(2001年11月の情報処理学会で発表) 3.複合述語形成をめぐる言語理論の整理 様々な複合述語研究を整理してみると、受動、使役といった個々の構文に着目する研究は多く存在するが、複合述語形成といったより広汎なメカニズムを探究する動きの多くないことがわかった。 そこで、策定してきた素性構造に基づき複合述語間に共通する制約を抽出することで、述語形成の一般的メカニズムの端を明らかにした。(2002年3月の言語処理学会で発表)
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