研究概要 |
情報検索や情報管理の効率化の方法として,モバイルエージェント技術を利用した様々なシステムが提案され研究されてきた.これまでにPC上で導入されているモバイルエージェントシステムにおいて,エージェント数を無計画に増加させ,逆にエージェント自体がネットワークトラフィック増大の原因となってしまう例が多い.今後,モバイルエージェント導入の急激な増加予想がされている携帯電話や情報家電などに使用されている組み込み機器ネットワークに対しても同様な問題が生じる可能性が高く,最適なモバイルエージェント数を決定する必要がある. そのために,本研究では,まず,モバイルエージェントの"生存時間"とサーバ上の"ターゲット存在確率"をモバイルエージェントのパフォーマンスに影響を与えるパラメータとして考え,これらの振舞いを実際にインターネット上で確かめる事前実験を行った.次に,事前実験で決定したパラメータを用いて,目標とするデータ(ターゲット)を取得する際のモバイルエージェント数とそれに要する通信とデータ処理の時間コストの変化を計算機シミュレーションにより調べた.そして,これら2つのパラメータが,モバイルエージェントを導入する適切な状況を判断する主な要因となることも示した. 一方,これまでの研究で,モバイルエージェント数に着目した効率化の理論的研究として,情報検索において必要数以上のモバイルエージェントは無駄になることを確認している.本研究では,最適なモバイルエージェント数を決定する問題をグラフ理論ベースに「モバイルエージェントグループ化問題」として定式化を行った.そして,この問題のNP完全性の証明を行い,この問題の本質的難しさを明らかにした.
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