研究概要 |
本研究では複雑社会系における仮想金融市場シミュレーションサーバの開発を目的としている. 平成13年度における研究成果として,当初の計画通りシミュレーションサーバのプロトタイプ製作を行った. プロトタイプ製作に当たって,サーバ・クライアントの各システムをJAVA言語を用いて実装し,システム間のコミュニケーションには,XMLベースの通信プロトコルを設計し,実装した. これらのシステムを用いることで,比較的簡易に複数のエージェントプログラムを用いた仮想的な金融商品取引のシミュレーションが可能となった. また,本システムを用いて,いくつかの人工市場研究を行った. そのひとつは,「人工市場における外部情報の解釈と市場の振る舞いに与える影響」という研究であり,そこでは従来の経済学では考慮されてこなかった情報の解釈の揺らぎが市場の振る舞いに対してどのような影響を与えるのかを,シミュレーションを通して明らかにした. もうひとつの研究として,「人工市場における分散投資と市場の振る舞いに関する研究」を行った. そこでは,ポートフォリオ選択理論に基づく分散投資エージェントを開発し,複数銘柄の金融商品を想定した人工市場を構築して,分散投資の影響力をシミュレーション上で検証した. これらのシステム開発とシミュレーション研究を通して,従来人工市場・仮想金融市場研究で取り上げられてこなかったテーマに関して,重要な知見が得られた.
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