研究概要 |
本研究は、意思決定における選好構造を多様体構造として捉える。そして、選好における属性間の複雑な相互作用の大きさを定量的に捉えるための概念・指標を合理性に関する公理系から導き、その指標を通して、多様体の特徴・性質を特徴付ける。また、これらの理論に基づいた計算システムを構築し、これが広く利用されるようにすることを目的としている。 昨年度・今年度の研究を通して,相互作用の大きさを定量的に表現する指標として、これまでに提案されてきているシャープレイ型、バンザフ型、連鎖型、内部型、外部型の相互作用指標を特徴付ける公理系を規定した。また、これらの指標に共通する性質:「限界相互作用の期待値表現」から、基数的期待相互作用のクラスを規定し、その公理的特徴付けを行った。属性およびそれらの集合の価値・選好が非加法的集合関数の形で表現されているとき、基数的期待相互作用のクラスは、その集合関数の多重線形拡張によって与えられる多様体面の高次偏微分(相互作用の大きさを求めたい属性集合の各要素方向の偏微分)の、属性の選択確率に関するスティルチェス積分として表現されることを明らかにした。その上で、すべての基数的期待相互作用と、上の「属性の選択確率」が1対1に対応することを示し、これまで提案されてきた種々の相互作用指標を決定する選択確率を与え、それらの新たな解釈を与えた。 一方、任意のショケ積分で表現される凸な区分線形多様体が、或る2段のショケ積分によって、凸な区分線形多様体に分解される3つの必要条件についても明らかにした。 応用に関しては、現在、属性の選好・重視度の構造から、属性間の相互作用を定量的に示すための計算システムの構築を行っている。 これらの成果は、国際会議において発表・公表した。その成果の1部はセレクテッドペーパーとして国際的な学術雑誌に再掲載されることになっている。
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