研究概要 |
動作・不動作状態を繰り返すソフトウェアの時間的・確率的挙動を,マルコフ過程として捉えて状態遷移図を描いた.このとき,デバッグ作業によるソフトウェア信頼度成長過程,フォールト修正困難度の上昇傾向および不完全デバッグ環境を考慮した.マルコフ解析を実施して,まず(1)瞬間ソフトウェア・アベイラビリティ,(2)平均ソフトウェア・アベイラビリティ,(3)区間ソフトウェア信頼度,および(4)条件付き平均利用可能時間の4つのソフトウェア可用性評価尺度を導出した.これらは,それぞれ(1)任意の時刻においてソフトウェアが動作可能である確率,(2)稼働時間区間に対するソフトウェアが動作可能である時間の割合,(3)任意の時間区間で継続的にソフトウェアが利用可能である確率,および(4)ソフトウェアが利用,可能であるときのその後の利用可能時間の平均,と定義される. 次に以下の状況を考慮した.ユーザが認知するソフトウェア故障は,使用中にシステムダウンとなったとき,あるいはユーザが使用したいときにシステムが利用できないときのいずれかである.そこで,先の状態遷移図を基に,ユーザの使用/不使用状況を考慮した状態遷移図を再描画した.この図を元にマルコフ解析を実施し,(5)使用中の失望確率,および(6)修復中の失望確率という新たな2つのソフトウェア可用性評価尺度を導出した.これらは,それぞれ(5)ある時刻にソフトウェアシステムを使用しているとき,その後ユーザの使用が中断される確率,および(6)ある時刻にソフトウェアが修復中であるとき,その後ユーザ使用が発生したときにソフトウェアが使用できない確率,と定義される. 上記6つの評価尺度を用いたソフトウェアの可用性解析を実施し,本評価手法の妥当性・有効性を検討した.
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