本研究は、プラント保全作業を産業プラントと人間とのマン=マシン・インタフェースとして捉え、保全作業における調整作業時の人間行動について認知行動面から検討することにより調整型技能作業の作業効率向上とヒューマンエラー防止に向けた対策を講ずること、および人間行動形成因子が作業に及ぼす影響についても検討し人間行動因子面からの対策も講ずることを目的としている。 平成13年度は、現場調査、文献レビュー、実験環境の整備、実験研究を行った。 まずは産業プラントの保全作業における調整型の技能作業の調査を行い、実態を把握した。具体的には、食品工場、鉄工所、原子力発電所、および石油精製プラントを訪問し、現場作業員へのインタビューおよびビデオ撮影・分析を行った。その結果、認知行動の観点からは、調整型技能においても諸々の作業によって「技能」および「技能に必要な要素」が異なることが明らかとなり、その知見を基に調整型技能マップを作成した。現場調査では、同時に人間行動形成因子調査も行い、メインテナンス時に大きな役割を及ぼしている行動形成因子を明らかにした。 文献レビューでは、認知人間工学関連、技能関連、学習心理学関連、プラント機器関連の論文調査を行った。 実験環境の整備では、先述した調整型技能マップを基に、研究室における基礎実験のモデル作業とすべき技能要素について検討しモデル作業を決定した。具体的にはプラント全般に関わってくる締付型の調整とポンプの芯だし時に多く見られるストローク型の調整をモデルとして実験で扱うことにした。平成13年度の実験研究は平成14年度に向けた予備的意味合いが強かったが、調整型技能における技能獲得のプロセスが認知的観点からある程度明らかとなった。また、作業者の性格が技能遂行に大きく影響していることが明らかとなるなど、これまで得られなかった知見も得ることができた。(778字)
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