研究概要 |
微動は弾性波動の複雑な確率現象である.通常の微動アレー探査法では観測したすべての時間またはある安定した一部の時間を使用してスペクトル解析が行われる.波動場が定常であれば問題ないが,実際の観測では非定常な交通振動が含まれる場合が多い.本研究では,観測されたアレー微動記録をどの程度利用した場合,推定される位相速度やパワー比に影響を与えるかどうかを調査した. 盛岡市内15地点の学校のグラウンドを利用して,7台の地震計からなる三角形型のアレー微動観測を行った.各地点でアレーサイズを40m,25m,10mとした3回の観測を行った.観測時間は1回につき40分である.こうして得られた微動記録を使用して,基本区間を40秒とし個々の区間の平均振幅を算出する.全区間の平均振幅を規準として,個々の区間の平均振幅がある値以下のみをスペクトル解析に使用して,その比の値により推定される位相速度や微動に含まれるRayleigh波とLove波のパワー比がどのように変化するのか検討した. その結果,全観測地点において比の値が上がるにつれ,推定された表面波の位相速度の分散曲線のばらつきが減少することが確認された.比の値は1.8程度まで大きな値を示したときでも,分散曲線は安定した値を示した.従来の考えでは,常時微動は非定常な交通振動は利用しないほうがよいため,振幅の小さい区間のみを使用して解析するべきだとの考えがあったが,今回の結果はその考えと反する結果となっている.1,8のとき,使用する区間は全観測時間の90%以上に及ぶ.ただし,観測場所により車の通行状況が異なるため,一般化した結論を導き出すことは難しい.
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