微動探査は、微動に含まれる表面波の位相速度や、微動の水平動と上下動の振幅比(H/V)が周波数とともに地盤構造によって変化する現象(分散)を利用する。従来の研究では、表面波の基本モードのレイリー波のみを考慮して、位相速度解析やH/V解析を行ってきた。しかし、実際の微動がどのような波動で解釈できるか現時点では不明瞭であったため、上記の手法の妥当性に疑問が残る現況にあった。 我々は今まで、微動がレイリー波とラブ波で構成される仮定に基づいて、3成分空間自己相関法の開発によって、3成分微動アレー観測により、両者の位相速度の分散関係を識別することに成功した。この研究では、実際の微動の場において、盛岡市域の複数の観測地点で、レイリー波とラブ波のパワーの比率を推定し、地盤構造や周囲の振動源の影響によってそれらがどのように変化するのかを検証した。その結果、すべての観測点で、レイリー波とラブ波のパワーの比率は一定値を示し、10Hz以下の周波数帯で、その比率はほぼ1:1であった。 さらに上記の結果に基づいて、微動のH/Vスペクトル比から、レイリー波とラブ波が1:1の比率で存在する仮定のもとで、表面波H/Vを計算し、遺伝的アルゴリズム(GA)の手法を利用して、地下S波速度構造の推定を行った。GAの手法を利用することにより、従来まで一意に決定することが困難であった地下構造の逆解析手法に改良を加えた。その結果、すべての地点で地下構造探査に成功し、その結果は、独立に3成分微動アレー探査から求められたものとほぼ一致した。微動のH/Vスペクトル比はその構造から期待される予測値とほぼ一致した。この結果は、微動がレイリー波とラブ波が同じ比率で構成されることを意味している。
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