研究概要 |
阪神・淡路大震災では,地震時の交通混乱や水利不足のため大規模火災に発展した。このような状況下での火災に対してヘリコプター等の航空機を用いた空中からの消火活動の可能性に期待が寄せられている。しかし,1回に搬送できる水量は限られており,気象条件や地形特性などの自然条件,火災規模や延焼速度など火災状況等に応じた最適な水投下の条件について確立されていない。これまでにも実機を用いた実規模実験が行われているが,広大な場所や膨大な予算を必要とするため頻繁に行うことは難しい。そこで,本研究では実規模実験より容易にしかも同等の結果が得られる小規模な模型装置を提案し,実規模実験との相似性を検討する。 まず,ラジコンヘリコプターを用いてダウンウォッシュを発生させ,ダウンウォッシュ中における投下物の挙動について実規模実験との比較を行った。ラジコンヘリコプターのメインロータを3相誘導電動機に取り付け,インバータを用いて回転数を制御する。メインロータ下に消火水タンクモデルを吊るし,水の代わりに米ぬかを投下物として落下させ,投下物の挙動をデジタルビデオカメラで撮影した。その結果,無風の状態では投下物がほぼ直下に落下しているが,ダウンウォッシュの風速が上がるに従って投下物の拡散幅が広がっていく様子が観測できた。このことより,投下物の拡散特性はダウンウォッシュの強さに影響されることが明らかとなった。次に,実規模実験と模型実験との相似性を検討するため,支配されている物理法則の検討を行った。投下物の挙動に関して(1)気流の慣性力(2)気流の粘性力(3)投下水に働く流体の粘性力(4)投下水に働く重力(5)投下水に働く表面張力が関連していると考えられる。これらのパラメータより相似則の緩和を行い支配的なπナンバーを導出した結果,ダウンウォッシュの慣性力と投下水に働く重力の関係を表すフルード数が大きく作用していることが明らかとなった。
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