この研究の第一の目標はレーザーとプラズマの相互作用を用いた陽子加速の原理実証を行うことである。今年度は、昨年度に引き続き陽子源から射出された陽子を1MeVまで加速させる前段加速器の製作を行った。前段加速器としてシャントインピーダンスが高く、加速効率が優れているIH(Interdigital H-mode)型線形加速器を採用している。試作器の製作が終了し、その性能測定(共振周波数、Q値、電場分布)を行った。電場分布、共振周波数の実験結果はシミュレーション結果と数%の誤差は生じたが、これは装置の微調整により改善できることがわかっているので、ほぼ設計通りの結果が得られた。また、Q値は試作器ということで材質に真鍮を用いたことにより、設計値の約三分の一程度の値になってしまった。今後、試作器の微調整を行い、実機に向けた詳細な測定を行っていく予定である。 一方、陽子加速に向けた高出力レーザーを用いたプラズマ航跡場励起実験では、電子プラズマ波が励起されていることは観測できたが、現有するレーザー装置の調整不足のため満足できる結果を得ることが出来なかった。今後、レーザーの改善・調整を行う必要がある。
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