前年度は取組むべき衝突項として荷電粒子系に対するFokker-Planck(FP)型衝突項を取り上げ、従来高計算負荷が障害となっていた直接解法の実現策として、その高速演算を実現しうる専用計算機の設計・開発、および専用計算機による演算高速化の有効性について検証を行った。多重積分専用パイプフインを大規模Programmable Logic Device(PLD)上へ実装した実証機による一連の検証から、複数PLDの使用によるパイプライン多本化でおよそ10GFLOPS程度まで衝突項演算を高速化可能である見通しを得た。本年度は、前年度で示された結果を基とし、開発された専用計算ボードと組み合わされる、非衝突過程解析に供されるVlasov方程式の数値解析コードの開発が進められた。高次元位相空間内での解析となるVlasov方程式の数値解析には高速演算の計算機環境が必須となる。これを可能とする方法として、汎用計算機による計算機クラスタに着目し、同システム上で実行される並列化Vlasovコードの構築を行った。同コードはConstrained Interpolation Profile(CIP)法に基づいて開発が行われ、その過程において既存のCIP法における補間方法の改良・提案が行われた。さらに、開発された並列Vlasovコードの相対論的多粒子系への拡張を行い、Maxwellコードの組込みにより粒子・電磁界相互作用等の複雑問題への適用が可能となった。開発されたVlasovコードは非衝突過程が支配的な物理系として電子の電磁場加速である逆制動放射加速を例題として精度面での検証が行われ、開発された並列化コードが良好な精度と効率を持つことが確認された。専用計算機による衝突過程の高速解法と本年度開発された計算機クラスタシステムを使用したVlasov方程式の数値解析手法により、従来には無い高精度な衝突過程をも含めた分布関数の数値解析手段が実現された。
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