研究概要 |
大気圧ヘリウム誘導結合プラズマは,その高いイオン化能力によりハロゲン元素および非金属光素に対しても有効であるために,分析用の光源やイオン源として注目されている。しかし,プラズマトーチの溶融などの問題により入力電力を大きくできないという欠点を持っている。 そこで本研究では,低電力でプラズマを維持し,数Hzから数kHzで変調した高電力パルスを加える,パルス変調ヘリウム誘導結合プラズマ発生装置を作製し,その特性を分光により測定した。パルス幅1ms,パルス変調周波数66.7Hz,プラズマ維持電力400Wのとき,外部冷却なしで1600Wのパルス電力を印加することができた。 ピーク電力が400Wのとき,すなわちパルスを入力しない状態に対し,ピーク電力1600Wでは約12倍の発光強度が得られた。また,励起温度はパルスの谷と比較して約1100K上昇し,4900Kという値が確認された。これは,パルスを印加しない本装置の以前の報告における励起温度(3000-4200 K; 500-900 W)を超えており、またA.Montaserらのグループで得られている高入力定電力ヘリウムICP (3800 K; 1500 W)よりも高い値となっている。また,アルゴンICPにおいて報告されている値(4800-7000 K; 1000-1500 W)に近い値となり,パルス運転がヘリウムプラズマの欠点であった低いプラズマ温度の改善に有効な方法であることが確かめられた。さらに,定電力運転で観測された発光強度および励起温度の飽和傾向がパルス電力運転では観測されなかった。これは,微量元素分析への応用を考えた場合にも有効な特性であると考えられる。
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