本年度はAr/SF6またはXe/SF6混合ガスの直流放電により生成した負イオンを含む多成分プラズマ中においてイオンバースト実験を行った。プラズマ中に挿入したメッシュグリッドにパルス電圧を印加することによってイオンバーストを励起し、ラングミュアプローブ・ファラデーカップを用いてバースト信号の検出を行った。Time-of-Flight法を用いてバーストの伝播速度を測定することで、バーストを構成しているイオン種が同定可能であることを明らかにした。特にAr/SF6プラズマ中において二種類以上の正・負イオンバーストの同時伝播が観測された。また、単一イオン種プラズマと多成分プラズマの間でバーストのテール部の振る舞い(バースト信号の特徴的な減衰時間)が異なることを見出した。このバーストテール部の形状はイオンシース形状と密接な関係があり、現在、一次元モデルを用いた解析的な検討を行っている。バーストテール部の振る舞いとシース構造の関係を定量的に明らかにすることは来年度の主要な研究目標である。実験と並行して、グリッド周辺におけるイオン群の時間・空間的振る舞いを調べるために、CとFortranを用いた一次元静電粒子シミュレーションコードの開発を行った。負イオンを含む三成分プラズマ中に挿入した負電位のグリッドの周りに形成されるイオンシース、およびそのグリッド電位を急激に取り除いた場合に励起される正イオンバーストが再現された。正イオンおよび負イオン種が増加した場合や、グリッドに正電位を印加した場合の詳細なシミュレーションは来年度の課題である。また、核融合科学研究所の高密度ECRプラズマ生成装置HYPER-I中でのイオンバースト実験を現在準備中である。高密度の磁化プラズマ中におけるイオンバースト特性の研究はこれまで行われておらず、興味深い結果が得られるものと考えている。
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