大阪大学FIX-FRC装置において、プラズマ移送技術を用いることによって、世界に先駆けてFRCプラズマへの中性粒子ビーム入射実験が行われ、安定性の向上、配位持続時間の伸張等の実験結果が得られている。実験結果を定量的に評価するにあたり、プラズマ内部構造の詳細な計測を行うことが必須となる。本研究では、FRCプラズマの内部構造を解明するための多点分光計測を行うことを目的としており、具体的には、(1)ミラー磁場形状制御によるFRC移送過程の最適化、(2)プラズマ中の不純物(C)発光スペクトルのドップラー広がりを測定することによるイオン温度計測、(3)YAGレーザを用いたトムソン散乱電子温度計測を行った。方向性プローブを用いた装置下流端部での損失流測定から、最大10cm程度のプラズマ位置のシフトが移送時に発生していることが明らかになった。これに対する改善策として、装置端部のミラー磁場形状を変化させることによる最適化を試みている。また、YAGレーザを用いたトムソン散乱電子温度計測装置を開発し、径方向3点の電子温度同時計測を行った。この結果、電子温度はプラズマ磁気軸付近で50eV程度と、FRCの径方向圧力平衡から見積もった平衡温度(イオン温度と電子温度の和)のほぼ1/2の値をとり、また径方向に有意な傾きを有していることが明らかになった。さらにイオン温度分布計測を行うにあたり、予備実験として単点のイオン温度計測実験を行った。測定の結果、最大で100eVを超える程度のイオン温度が観測された。イオン温度分光計測を多点化するにあたり、分光器入射側に設置する光ファイババンドルを設計製作した。16芯の石英ファイバを5本組み合わせて、分光器に接続する側のファイバを縦一列形状にし、5地点のイオン温度同時計測を行う。
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