ヘリオトロン/トルサトロン型磁場配位においては、ヘリカルリップル捕捉粒子の軌道が磁気面からずれる為に、高速イオンの閉じ込めの問題は常に議論の対象になってきた。本研究では、核融合科学研究所のコンパクトヘリカルシステム(CHS)における高速イオン閉じ込め・損失過程を調べる目的で、シンチレータとピンホールを組み合わせたかたちの高速イオンプローブを採用した。このプローブの基本的な動作について以下に簡単に記す。ピンホールを通過した損失高速イオンは、検出器内に設置されたシンチレータ板に衝突する。この衝突によりシンチレータ板上に現れるシンチレーション光の2次元分布を、CCDカメラにより測定することにより、損失高速イオンのエネルギーとピッチ角の情報を知ることが出来る。中性粒子ビーム(NB)入射後、減速及びピッチ角散乱を経てヘリカルリップルに捕捉され大半径方向内側に軌道損失してくるビームイオンを検出できるようプローブを設計し、CHSに適用した。 CHSのNB入射加熱(入射エネルギー38keV)放電にて、シンチレータ板上に局所的なシンチレーション光を観測した。これは、NB入射しない電子サイクロトロン加熱のみのプラズマでは観測されず、またトロイダル磁場方向を逆転させると観測されないことから、軌道損失高速イオンによるものであると判断できる。観測された損失高速イオンのエネルギーとピッチ角は、それぞれ5-20keV、60度近辺であった。軌道解析から、ある程度熱化したヘリカルリップル捕捉損失ビームイオンであることが分かった。従来から用いている大半径方向外側のプローブで観測されてきたMHD揺動に同期した高速イオン損失はこれまで観測されていない。以上の内容については、平成14年7月に米国マディソンで開かれた第14回高温プラズマ計測会議にて発表した。今後、衝突を含んだかたちの高速イオン輸送計算を行い、観測結果がシミュレーション計算により再現されるか否かを調べる予定である。
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