本研究は、D-T核融合実用炉液体リチウムブランケット概念における検討課題であるリチウム冷却材の電磁流体力学効果による圧力損失を解決する有力な手段として、耐腐食性を持つ絶縁コーティングを配管材料表面に設置する事を考えて、有力なコーティング素材候補と考えられる窒化アルミニウムについて、その特性を損なわずに配管材料候補である低放射化バナジウム合金上に薄膜化する手法を開発する事を目的としている。 本年度は、まず、コーティング手法の開発として、プラズマスパッタ法及びアークソースプラズマ蒸着法によるコーティング試作研究を行った。プラズマスパッタ法においては窒素圧力を上昇させる事によって、絶縁性の高い高結晶性コーティングを得る事ができたが、耐腐食コーティングとして重要な不純物酸素濃度の低減が課題である事がわかり、これを改善するべくパラメータ模索を行った。アークソースプラズマ法によって作成したコーティングは、不純物酸素濃度を低く抑える事ができたが、結晶性を高める事が課題である事がわかり、これを改善するためのパラメータ模索を行った。 さらに、コーティングの特性研究として、作成したコーティング及び窒化アルミニウム焼結体の高温液体リチウム中での共存性試験を、米国オークリッジ国立研究所の腐食試験装置を使って行った。この結果、600℃以下で、窒化アルミニウム中の酸素濃度が共存性に大きく影響する事がわかった。また、700℃以上の比較的高温では、コーティング基盤であるバナジウム合金の構成元素による窒素の吸収が起こり、コーティングからバナジウム合金基盤への直接の窒素移行だけでなく、液体リチウムを介在しての質量移行によって、腐食が進行する事がわかった。 なお、本年度の研究成果のうち一部を、日本原子力学会及び第10回核融合炉材料国際会議にて広く内外に公表した。
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