D-T核融合実用炉におけるより高性能なブランケットシステムとして検討されている液体リチウムブランケット概念におけるMHD圧力損失を解決する手段として、絶縁性セラミックスコーティングを配管構造材料表面に設置する事が考えられている。本研究では、配管用コーティング材として核融合炉環境下で良い特性を示す窒化アルミニウムを有力な候補と考え、平成13年度には、この材料の特性を損なわないように、スパッタリング法、イオン注入法などのいくつかの方法で、核融合炉配管構造材料候補である低放射化バナジウム合金上に結晶性コーティングを試作した。平成14年度は、試作したコーティング材、及び、AlNバルク材に対して、高温液体リチウム中での耐腐食性試験を行った。その結果、600℃以下の比較的低温領域においては、AlN中の主な不純物である酸素の濃度が、電気抵抗値の低下という腐食挙動に大きく影響している事を示し、その考察に基づいて、低酸素濃度のAlN材を試作し電気抵抗値が抑えられる事を示した。しかし、700℃以上の高温領域においては、液体リチウムを通して窒素が移動し、バナジウム合金中の成分であるチタンによる窒素の吸収速度が大きくなり、最大1400時間の共存性試験によりAlN自体の溶出が発生した。これらの結果を元に、ブランケットの最大到達温度として750℃程度を考える場合には、冷却材であるリチウムがバナジウム合金及び窒化アルミニウムの両者と同時に接しないような設計概念が必要となる事がわかった。また、これらの結果について国内外の学術会合にて広く公表した。
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