色素増感型太陽電池は、原料コストが安価で製造が容易であり、比較的高い変換効率を有することから、低コスト高効率太陽電池としての可能性が期待されている。しかし、増感色素として優れた性能を示すとされているルテニウム色素でも、シリコン等の半導体と比較すると光吸収波長領域が狭く、特に650nm以上の光をほとんど吸収することができない。そこで、ルテニウム色素に加え、600nm〜800nmに金属-リガンド間のチャージトランスファー遷移の吸収ピークを持つ色素を光の入射側から層状にマルチレイヤー構造化して、太陽電池の光吸収域を広げて効率の向上を目指した。 具体的には、ルテニウム色素とPheophorbide色素のエタノール溶液を用いて、ルテニウム色素/TiO2-Phephorbide色素/TiO2多層膜を形成し、その光吸収特性を測定し、それぞれの膜厚や色素坦持量を変えるなどして望ましい光吸収特性を作製した。その膜を用いて色素増感型太陽電池を作製し、前述の光吸収特性と比較しながら短絡電流の波長依存性を測定した。また、色素を混合坦持して作製した太陽電池と比較・総合評価を行い、これらを繰り返して、混合比、色素濃度、TiO2膜厚等を最適化した。
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