本研究は、温帯地域を想定した、1000kW/m^2以下の低エネルギー密度の集光太陽熱を化学エネルギーへ転換することを目的として、高活性のメタン改質触媒デバイスの開発を行うものである。吸熱反応である、メタンの水蒸気、あるいは二酸化炭素による改質反応、CH_4+H_2O→CO+3H_2 CH_4+CO_2→2CO+2H_2に集光太陽熱をプロセスヒートとして吸収させ、水素+一酸化炭素の混合燃料ガスを得ることで、燃料の持つエネルギーを原料メタンと比較して25%程度、太陽エネルギーによって増大させることが可能である。集光を反応器の石英窓を通して直接、触媒金属を担持したセラミック製の発泡体プレート(触媒デバイス)に照射し、これに反応ガスを流通し、高効率で反応を行う大型のソーラー改質器が、ドイツ、イスラエルで既に開発されているが、日本等の温帯地域で、この改質器を有効に利用するには、さらに高活性の触媒デバイスが必要であり、本研究では、このデバイスの開発を行っている。まず、セラミックの発泡体プレートに代えて、熱伝導効率の高い金属発泡体プレートを使用することが、重要と考え、今年度はこれについて検討した。 Ni-Cr-Al金属発泡体にMgO担体をウオッシュコートし、さらに触媒金属としてRuを担持した触媒デバイスを開発した。小型のデバイスに270kW/m^2の比較的低エネルギー密度の擬似太陽集光を直接照射し、メタンの二酸化炭素改質反応に対する活性を検討した結果、反応ガスの滞留時間0.4秒で、メタン転換率73%を得た。照射した太陽エネルギーの50%が化学燃料(水素+一酸化炭素)に転換されており、低エネルギー密度の集光照射下における触媒デバイスとしては、従来にない高いエネルギー転換効率を得ることができた。反応時の触媒デバイスの最高温度は金属発泡体の耐熱限界温度以下の870℃であり、使用に問題は無い。来年度は、Ru/MgO触媒に代えて、安価で長寿命のNiO-MgO触媒を担持した金属発泡体デバイスで、高活性デバイスの開発を行う予定である。
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