高温領域におけるアクチノイド水素化物の熱拡散率を測定するため、水素化物試料を封じ込めるための試料ホルダーを作製した。試料からの水素の加熱再放出を防ぐため、耐熱性のヘリコフレックスシール(ガスケット)およびアロンセラミックスを用いて試料を密閉した。また、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置を用いた熱拡散率測定において、2.6keVのレーザー光および温度上昇に伴い発生する赤外線の透過に影響を与えないようにするため、サファイアを試料ホルダーの窓に選定した。その窓の寸法は直径20mm、厚さ1mmであった。 まず初めに、ジルコニウム水素化物の解離温度は約700K付近であるが、この高温熱拡散率測定用試料ホルダーを用いることにより、室温から800Kまでの温度範囲におけるジルコニウム水素化物(ZrH_<1.88>)の熱拡散率を測定することを可能にした。ZrH_<1.88>の熱拡散率は温度の増加と共に減少した。600〜800Kにおける熱拡散率の減衰率は、室温〜600Kにおける熱拡散率の減衰率よりも低いことがわかった。さらに、より解離圧の低いZrH_<1.91>の熱拡散率を室温から750Kの温度範囲まで測定することができた。ZrH_<1.91>の熱拡散率はZrH_<1.88>の熱拡散率よりも高く、その差は600〜800Kの高温領域においてほぼ一定であることがわかった。また、測定した熱拡散率に密度および比熱を考慮して熱伝導度を求めた。熱伝導度の水素濃度および温度依存性についても同じ傾向が見られた。これらの事実について調べるため、直流4端子法により室温から600Kにおける電気抵抗率を測定し、電気伝導度を求めた。熱伝導度、電気伝導度およびWiedemann-Franz則から、高温領域におけるジルコニウム水素化物の熱伝導は、電子伝導が支配的であることを示した。また、高温における熱伝導度の濃度依存性は、格子欠陥による電子散乱に依存することが考えられた。来年度は測定不可能であった800〜900Kにおけるアクチノイド水素化物の熱拡散率について調べる予定である。
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