本研究は、放射性廃棄物の有効利用への道を開くことを目標としており、その具体例としてγ線エネルギーを利用した水の分解(水素製造)を可能とするシステムを開発するものである。従来報告されているG(H_2)値=0.45から予想されるように、γ線による水の直接分解では水素生成量は僅かと考えられるため、平成13年度では、γ線-固体相互作用(主にコンプトン効果)によってγ線を適当な波長の光または電子に変換し、これを反応容器に入れた水に対して照射することによって水の分解反応を促進させることを試みた。反応容器に蒸留水及び金属片を入れて名古屋大学既設のコバルト60照射装置を用いてγ線照射を行ったところ、蒸留水のみの時に比べて金属片を共存させた方が水素生成量が増加することを見い出した。共存させる金属片の数が多いほど、また高原子番号の金属片を用いた場合ほど、γ線は低エネルギーの電子や光子に変換され水の分解を促進することも明らかとなった。現段階では、水中に共存させる金属片の質量・種類を工夫することによって、水のみの時に比べて約20倍の水素を発生させることに成功している。 一方で、共存金属の形状(体積や表面積)を制御すればγ線-固体相互作用によるγ線エネルギー変換効率も変化するものと考えている。このエネルギー変換プロセスを理論的に解釈できるようにするため、EGSコードによるシュミレーションを来年度に向けて準備している状況にある。
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