本研究は、放射性廃棄物の有効利用への道を開くことを目標としており、その具体例としてγ線エネルギーを利用した水の分解(水素製造)を可能とするシステムを開発するものである。従来報告されているG(H_2)値=0.45から予想されるように、γ線による水の直接分解では水素生成量は僅かと考えられるため、γ線エネルギーを化学反応に有効な数〜数十eVへの光子・電子へ効率よく変換することが本研究の鍵である。 前年度までに、γ線ー固体相互作用(主にコンプトン効果)によってγ線を適当な波長の光または電子に変換し、これを反応容器に入れた水に対して照射することによって水の分解反応を促進させることに成功している。本年度は共存させる固体金属の種類や体積、反応系での空間的分布を制御してγ線の低エネルギー光子・電子への変換効率を向上させることに重点を置き、理論計算(EGS、MCNPコード)によるエネルギー変換シュミレーションを行い、実際の分解反応結果を相互に比較検討することによって、本システムの逐次改良・構築を行った。シミュレーションの結果、水中に共存させる金属板を重ねて入れると、固体金属から放出される二次電子が何度も金属と衝突することによって、電子のエネルギーを段階的に低下させたり、水中に放出させる電子数を増倍させたりできることが明らかとなった。この知見を基に、共存金属の形状や金属同士の間隔を制御することによって、水のみの時に比べて約40倍の水素を発生させることに成功した。
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