研究概要 |
ウラン含有ペロブスカイト型酸化物としてBaUO3とBa(U, Zr)O3を合成し、格子定数、熱伝導率、熱膨張率、融点、弾性定数、デバイ温度、微小硬度、電気抵抗率、ゼーベック係数を測定した。BaUO3はペロブスカイト型立方晶という比較的単純な結晶構造でありながら、各種物性間の相関がガラス的特徴を示すこと、並びに、熱伝導率が室温から約1200Kのどの温度範囲においても、固体状石英ガラスの熱伝導率よりも低いこと、をそれぞれ確認した。 また分子動力学法や分子軌道法といった計算機シミュレーションも実施し、BaUO3の異常に低い熱伝導率の原因を考察した。その結果BaUO3結晶格子中のウラン原子の結合力が他の原子と比べて弱いこと、そのためより激しく振動したウラン原子がフォノン散乱の中心となり格子熱伝導率を大幅に低減していること、が明らかになった。 一方、エネルギー変換材料の一つである熱電変換材料の性能は、無次元性能指数ZT(=S2σT/K、S:ゼーベック係数、σ:電気伝導率、T:温度、K:熱伝導率)により評価され、高性能な熱電変換材料になるためには、高い電気伝導率と低い熱伝導率を同時に持つ必要がある。この一見相反する性質を併せ持つ理想系のひとつとして「Phonon Glass and Electron Crystal(PGEC)」という考え方があり、これはフォノンにとってはガラスのように、電子にとっては結晶のように振る舞う物質のことを指す。 以上よりBaUO3の特異物性はフォノンガラス的特性を示していると言え、少なくとも熱電変換特性のうち熱伝導率の寄与に関しては性能向上に有利に働く可能性があることがわかった。
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