本研究では自然放射線のような低線量放射線が生物に対してどのような影響を及ぼしているのかを解明することを目的とした。植物を用いて自然放射線から遮蔽された環境等、種々の環境下において生育状況を精度よく観測することにより、自然放射線のような低線量放射線の生体へのホルミシス効果を検証する。 生育が比較的しやすく種子が入手しやすい植物を検討した結果、本研究ではカイワレを採用した。実験では統計的に有意なデータを得るこ`とが重要であるので、同一条件下での植物の生育状況がほぼ均一化する生育方法の検討を行なった。植物実験において従来行なわれている、生長後に根長や重量の計測のみならず、本研究では放射線が生長時に影響することを考慮し生長過程での直接観察が有効と考え、植物の生長時に発生する極微弱光の観測を予定している。そのため所有する恒温槽内に、鉛ブロックその他を利用して自然放射線を遮蔽できるような環境を構築し、生育・観測装置の設計製作を行った。なお、生体発光を精度よく測定するための観測装置には、低雑音型光電子増倍管を使用する。実験では、製作した観測装置内にNaIシンチレータ及び半導体検出器を設置し、ガンマ線及びX線スペクトル測定を行ない、遮蔽により観測装置内が低バックグラウンド環境となることを確認した。植物の発芽期間やその後の生長期間ごとに発光量及びスペクトルを効率良く観測し、装置内に置かれた場合と自然放射線下での測定と比較検討するための条件を求めた。また、線源を植物の側に置いた場合における生育への影響・効果の有無を確認するため、所有するガンマ線源や中性子源を使用した場合に生育させる植物が線源から受ける線量の概算を行なった。
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