昨年度までに確立した、EDTAによる微生物還元性鉄・マンガンの化学的抽出・定量法を、性質の異なる5種の水田土壌(黒ボク土、灰色低地土、黄色土、グライ土)および琵琶湖全域から採取した湖底堆積物の分析に適用した。黒ボク土壌以外の水田土壌では、上記の方法で抽出した鉄・マンガンがいずれも微生物還元性鉄・マンガンと非常に近似した値(鉄:70-120%、マンガン:90-110%)を示しており、本法が多くの土壌に適用可能であることが示された。また、従来の化学的定量法によれば、鉄では過大評価、マンガンでは過小評価していることが示され、土壌中の酸化還元反応におけるマンガンの重要性が指摘された。一方、黒ボク土壌では、両元素とも低く見積もられる(鉄:10%、マンガン:20%)傾向にあり、抽出にさらに検討が必要であると考えられた。 琵琶湖表層堆積物(0-2cm)の微生物還元性鉄は、空間的な差異はそれほど大きくなかったが、マンガンについては試料採取地点の水深との間に明瞭な正の相関が認められた。特に水深40m以上で、急激に微生物還元性マンガンの濃度が上昇していた。深度分布より微生物還元性マンガンは極表層に集積していることが明らかとなったことから、水温躍層形成期に湖底の酸素濃度が低下することにより、堆積物中のMn^<2+>が湖水へ溶出・再酸化を受けて湖底表層に堆積したものと推察された。このことから、微生物還元性マンガンが湖底の酸化還元環境の動態を測る1つの指標となることが示唆された。
|