本研究では、仮説「湖水中に存在する見かけ上の難分解性溶存態炭水化物は腐植物質に関係する」を検証し、腐植物質を代表とする陸域由来の有機物の微生物分解性をあきらかにすることが目的である。計画は、1)湖水中に含まれる溶存態炭水化物の多糖類の分画・同定、2)腐植物質と糖類の関係性の検討とその微生物分解性の検証の2点から構成されている。実施計画は平成13年度に1)を行う予定であったが、分画・同定のための機器が揃わなかったため、2)を中心に研究を行った。 <腐植物質中の糖類の同定>河川水中の腐植物質をXAD樹脂により抽出し、腐植物質中に含まれる糖類の同定を行った。中性単糖類は、グルコース、ガラクトース、キシロースを多く含む組成が得られ、河川水中の溶存態糖類の組成に近い結果が得られた。しかしながら、推定される腐植物質中の糖類の量は、腐植物質の乾重量に対し1%程度しかなく、河川水中の糖類に対しても、約10分の1の量しかなかった。これは、陸域より供給され湖水中において難分解性を示す糖類が、腐植物質中の糖類以外にも多く存在することを示しており、腐植物質と湖水中の難分解性溶存糖類に関係があるとする仮説は否定された。 <糖類の微生物分解性>そこで本研究では、湖水中の糖類の微生物分解性について詳細な検討を加えた。暗条件での微生物分解の結果、バクテリアの増加による糖類の増加が見られ、難分解性の溶存態糖類はバクテリアによる生体ポリマーの生成の可能性が示唆された。 <次年度計画>当初の計画の1)を行い、溶存態炭水化物の多糖類の分画・同定を行い、糖類の構造や起源の推定を行う。また、仮説は棄却されたものの、腐植物質中の糖類について微生物分解性を検討し、陸域由来の有機物の微生物ループへのインパクトを検討したい。
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