本研究課題では、魚類の群集構造の違いから、河川における人為的な環境改変による影響評価に利用されている生物保全指数(Index of Biotic Integrity)の考え方を援用し、この指数の沿岸海域版を開発することを目的としている。平成13年度は、生物保全指数の開発とそれに必要な生物群集および対応する環境データの収集に取り組んだ。得られた成果は次の通りである。 1 生物保全指数の開発 河川における生物保全指数に鑑みて、この指数の基幹となる沿岸海域の魚類群集を診断するための評価項目を設定した。すなわち、種多様性の評価項目として、(1)遊泳魚種数、(2)着底魚種数、(3)潜砂魚種数、環境指標性の項目として、(4)定住性魚種数、(5)迷い込み魚種数、再生産性の評価項目として、(6)再生産魚種数、個体生産性の評価項目として、(7)個体数密度の合計7項目を取り上げることにした。また、各評価項目の実データに対する健康度合いへの数量化は、実データを10〜1(または5〜1)の得点に換算して、人為的インパクトの弱い方(健康状態として最良)に高い得点が与えられるよう、評価関数を設定する予定である。 2 生物群集と環境データの収集 上記の生物保全指数の試算、適用に関しては、主として、関西国際空港の建設に関連して調査されている(1987年〜現在)、大阪湾泉州海域における魚類、ベントス、水質、底質などの生物群集と環境のデータを利用する予定である。現在、これらのデータの使用許可が得られるよう、空港関係者に交渉している段階である。
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