平成14年度は、p53^<+/->マウスに発症した急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia : AML)2例について新たに染色体ペインティングを実施するとともに、昨年度の12例の未分化型白血病(stem cell leukemia : SCL)を含めてさらに詳細な解析を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 1.p53^<+/->マウスに発症したAMLでは、野生型マウスのAMLと同様の2番染色体の欠失が観察された。 2.p53^<+/->マウスのAMLでは、11番染色体の異常は観察されなかった。 3.p53^<+/->マウスのAMLでは、SCLに見られたような同一個体内での核型のばらつきは認められなかった。 4.p53^<+/->^マウスに発症したSCLでは、いずれも11番染色体の異常の結果、野生型のp53アリルが欠損していた。 5.p53^<+/->マウスのAMLでは、野生型のp53アリルは残存していた。 以上の結果から、野生型p53アリルの欠損によって染色体が不安定化し、SCL発症に至るものと推測される。一方で、AMLの発症に染色体不安定性が関与しているという証拠はなく、SCLとAMLでは発症機構が本質的に異なるものと考えられる。SCLは野生型のC3H/Heマウスには見られないことから、p53欠損マウスはAMLの発症機構を調べる動物モデルとしては不適当である可能性が示唆された。
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