研究概要 |
平成13年度の研究成果は以下のとおりであった。 タイヤアスファルト粉塵中に含まれる化合物の種類および溶出傾向:大気浮遊粉じんの起源物質(タイヤトゴム、アスファルト)および,環境試料(路上粉塵)の溶出液および溶出残渣からは多環芳香族炭化水素類(PAHs),それらのアルキル置換体,含窒素,含硫黄,含酸素化合物,フタル酸エステル類,ゴムの添加剤由来であるベンゾチアゾール類,酸化防止材として用いられるBHAやBHT,アルキルフェノール類などに加え多種類の脂肪属炭化水素(直鎖および分岐型のアルカン,脂肪酸,脂肪酸メチルエステル)など,同定の不確実なものも含め180種あまりの化合物を検出した。粒子に残留する化合物として排ガス粒子ではPAHs,路上粉塵,タイヤ,排ガス粒子からは、アルカン類や脂肪酸類など既報にある化合物が多く認められた。溶出液,粒子双方から検出された化合物としてフタル酸エステル類,ベンゾチアゾール類があげられ,これらは路上粉塵,タイヤに特徴的であった。 タイヤアスファルト粉塵由来化学物質の環境中での挙動:タイヤに特徴的な指標化合物を利用して,都市河川(野川,多摩川,隅田川)底泥環境におけるタイヤトレッド磨耗粉じんの負荷量の見積もりを行った(研究成果-1)。さらに,上記指標化合物とPAHsの水-粒子間分配を室内実験および野外観測を通じて比較した結果に基づいて,都市河川底泥環境におけるタイヤトレッド由来もしくは路面排水由来のPAHs負荷量の評価を行った(研究成果-3)。 光化学反応による溶出化学種組成への影響:上で同定された化合物のうち,標準品を入手できた化合物について,標準溶液を用いた光照射実験を行った。酸化防止材等に由来する化合物では,光照射(300〜700nm)を行うとGCクロマトグラム上でのピークが消失した。一方,PAHsの光化学反応生成物であると考えられる多環芳香族キノン類は光照射に対して安定であった。
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