本研究の目的は、大気環境中に存在し、主要な発ガン性物質として疑われている種々のニトアレーンや芳香族アミンに対して高感受性な菌株(Salmonella typhimurium NM3009およびNM2009を用いて、umu試験の高感度マイクロプレート化を試み、披検試料量を飛躍的に少量化することにより、PM2.5など微量な環境試料への適用を目指すことである。前年度までに、12種の陽性標準物質を用いて、最適条件の検討を行い、入り口試料量4μlで一度に2^<12>の範囲にわたる量反応曲線が得られる手法を確立した。本年度の目的は、本法を大気中の微量な粉じん試料に適用することであるが、PM2.5試料は極めて微量(<1mg/day)であることから、まず比較的大量の試料が得られるハイボリウム(HV)およびアンダーセン(AN)サンプラーを用いて検討を行い、本試験の改良を行った。 HV試料では、DCM抽出・濃縮後、アミノ固相カートリッジにより6つの溶媒極性画分に分け、試験を行い、ニトロアレーンの含まれる第3および第4分画において強いumu/SOS活性を確認し、粉じんを採取する際の吸引空気量は1-10m^3程度であると見積もられた。また、AN試料においては、粒径別の画分が得られるので、umu/SOS活性の粒径分布曲線を描き、2μmを境とする微小粒子では粗大粒子に比べて2.8倍の活性を示すことが分かった。以上の結果を基に、微量なPM2.5試料へ本試験を適用するため、PTFE製の濃縮管およびマイクロプレートを使用することにより、披検試料の濃縮率を向上させ、再現性のよい結果を得ることに成功した。PM2.5による最小umu/SOS活性空気量(空試験の2倍の活性を示す吸引空気相当量)は、0.05-1.0m^3程度であると推定した。 今後、他の環境試料(河川水・ガス状物質など)への応用に向けて取り組む予定である。
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