微生物産生のポリエステルであるポリヒドロキシブチレート(PHB)は生分解性高分子であるため、既存のプラスチック材料の代替材料として着目されている。PHBは糖類、有機酸、および油脂などを微生物発酵によって得られるため、ポリ乳酸とともに持続性を有する再生可能資源から導かれる生分解性高分子として期待されている。また、ポリ乳酸は生分解性に劣っているが、PHBは良好な生分解性を示す。しかしながら、1970年代よりPHBの大量生産が盛んに研究されてきたが、多大な生産コストを要するため、未だその商業規模での生産レベルに達していない。 本研究では、PHB産生菌であるRalstonia eutrophaより、PHB合成に関わる3種の酵素をコードしている遺伝子を他細胞に導入し、得られる形質転換細胞が産生するポリエステルの構造・物性・機能を評価することを目的としている。 本年度は、3つのPHB合成遺伝子であるβ-ketotiolase、D-reductase、およびPHAsynthaseをクローニングしたpUC19の大量調製を目的として、大腸菌への導入を試みた。JM109のコンピテント細胞を用い、定法によりプラスミドを導入しβ-galactosidaseの発現、およびプラスミドを取りだし、塩基配列を調べることによって大腸菌の形質転換に成功した。また、遺伝子導入装置を用い、エレクトロポレーションによる形質転換を行ったが効率的な導入は出来なかった。現在、適当なプロモーターをプラスミドへ組み込み、ガン細胞であるHeLa細胞へPHB合成遺伝子の導入を試み、動物細胞でのPHB産生を検討している。
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