研究概要 |
植物は二酸化窒素を吸収し、アミノ酸やタンパク質に同化する能力を持っている。その能力は植物種間で異なり、最大約600倍異なることをこれまでに明らかにしている。本研究では、二酸化窒素暴露時に応答する遺伝子、タンパク質を網羅的に解析し、二酸化窒素吸収代謝を律速する過程を解明することを目的とする。二酸化窒素は生体に取り込まれると生体物質を直接酸化したり、ペルオキシナイトライトや一酸化窒素を経てニトロ化、ニトロソ化することが考えられる。そこで本年度はまず二酸化窒素の影響を受けるタンパク質について抗ニトロチロシン抗体を用いて網羅的に調査した。 植物材料としてこれまでの研究で二酸化窒素吸収同化能力が高いことを示しているタバコとダンドボロギク、モデル植物のシロイヌナズナの3種を用いた。二酸化窒素暴露した植物葉から抽出したタンパク質をSDS PAGEで分離し、抗ニトロチロシン抗体を用いてウェスタンブロットを行い二酸化窒素暴露前後で比較した。その結果、暴露時に特異的なバンドが観察された。また、ダンドボロギクやシロイヌナズナでは2,3本のバンドが観察されたのに対し、タバコでは6本以上のバンドが観察された。そこで、タバコ植物葉から抽出したタンパク質を二次元電気泳動で分離後、抗ニトロチロシン抗体を用いてウェスタンブロットを行った。その結果、暴露時に特異的に検出されるスポットが6個あった。その内CBB染色で検出されるスポット4個のタンパク質について部分アミノ酸配列を決定した。その結果、それらは酸性Pathogenesis related(PR)タンパク質のPR-1とPR-5(thaumatin-like proteins)であった。
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