研究概要 |
藻場を形成するアマモの現状 瀬戸内海は世界的に生物生産量が高い海域で、多種多様な生物が豊宮に生育している。この豊かな海を支えているのが、海の高等植物アマモの個体群・藻場である。現在、瀬戸内海の藻場は、海砂の採集・海域汚染により、分布域が激減している。藻場の分布域の減少はサワラ、イカナゴなどの漁獲高の低下を引き起こし、漁業に深刻な影響を与えていることが報告されている。この藻場の回復を試みるため以下のような実験・調査を行い結果を得た。 生態学的調査 野外調査 中島町大串海岸に10個のコードラート(1×1m)を設置し,その中にあらわれる実生(芽生え)についての追跡調査を行った。具体的には,平成13年4月から平成14年3月まで2週間から4週間ごとに,コードラート設置区を調査し,出現する実生数,死亡率,開花数,結実率,種子数についての調査を行った結果,開花期,結実期についての詳細なデータが得られた。この結果,瀬戸内海のアマモは暖かい地域にも関わらず開花期が遅く,種子生産の時期もずれていることがわかった.また食害率は約50%近くになり,食害動物が種子生産に大き存影響を及ぼしていることが解明された. 発芽実験 実験による発芽条件の設定を行った結果,非常に高い発芽率が観察された.発芽条件温度は比較的低温で15℃程度であった.このほかに特筆すべきことは全く発芽か確認されない個体が10%ほど認められたことである.これは自家受粉による近交弱勢の発現のための可能性もある。 遺伝学的調査 遺伝的多様性の調査を酵素多型マーカー(設備備品はこれに用いる)を用いて行った結果,中島町から採集したアマモの個体群での近交係数を推定できた.約F=0.22であり,比較的他殖に偏っていることが示された.また,これまで観察された多型よりも多くの多型が観察され,瀬戸内海のアマモの遣伝的多様性が高いこと示された.
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