循環型社会実現のために、いわゆる3R(リデュース、リユース、リサイクル)の達成が求められている。中でも「リユース」は、使用済み部品の価値を維持可能で、かつ、新部品製造の環境負荷、コスト、および、廃棄物量を削減可能な有望な手段である。本研究の目的は、リユース可能性の時間的な限界の評価手法を提案することである。本研究で解決を試みる「リユースの時間的な限界」とは、製品組込型のリユースは製品販売と製品回収が重なった期間でのみ可能であり、家電製品等ではこの重なりが存在しないため、どのような設計上の工夫をしようとも、そもそもリユースが原理的に不可能であることを指している。 本年度の成果は以下の通りである。 1.限界リユース率評価のケーススタディ 昨年度、製品の販売曲線と回収曲線の重なり部分の割合として定義、定式化した「限界リユース率」に基づき、計算機一式を使用して、限界リユース率評価ツールを開発した。さらに、このツールを用いて、具体的な例題に適用したケーススタディを実施した。その結果、長寿命型製品の場合は多世代設計が限界リユース率を高める鍵となること、逆に寿命が短く迅速に循環する製品の場合は、回収率の向上や販売期間の長期化が有効であることを理論的に明らかにした。 2.寿命評価手法の検討 昨年度の課題として、限界リユース率評価において、製品や部品の価値的、物理的寿命を考慮に入れていない点が挙げられた。そこで本年度は、特に評価が困難な価値的寿命を中心に検討を行い、既に提案してきた廃棄要因分析表を用いて、製品の廃棄分布から、価値的寿命、および、物理的寿命を推定し、リユース設計の指針とする手法の検討を行った。
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