研究概要 |
自動車交通により発生する外部不経済を定量的に評価する試みが欧米において進展してきたが、わが国では十分になされていない。すでに申請者らは概算値をいくつかの場で発表してきたところである(兒山・岸本(2001)「日本における自動車交通の外部費用の概算」『運輸政策研究』、Koyama and Kishimoto (2001) External Costs of Road Transport in Japan, WCTR Proceedingsほか)。これらの機会に様々な指摘を受けてきたが、特に重要と思われる事項から順に改善をはかっているところである。 本年度は交通事故の外部費用のうち後遺障害を含めた傷害についての金銭的評価を進めてきた。交通事故による死亡については逸失利益ではなく「確率的生命の価値(VSL)」を採用するのが適当であり、いかなるVSLを採用すべきかという研究はわが国でも多少見られるようになってきた。しかし傷害に関してはほとんど手付かずである。英国の既往研究によれば、仮想評価法を用いた傷害の損失評価額は上方のバイアスをもつという。一方、スタンダード・ギャンブル法(死亡や完全に健康な状態と何らかの疾病や傷害をもつ状態との相対的な価値付けを、アンケート調査をもとに推計するもの)を用いた評価額はほとんどバイアスをもたないという。 そこで本研究では、スタンダード・ギャンブル法により交通事故の傷害の金銭的評価を行うべく、アンケート調査を計画し現在実施中である。本来は面接による調査が望ましいが、予算の制約から郵送調査を実施している。英国の研究をもとにした傷害の分類と、わが国の後遺障害等級表に基づいた傷害の分類の2タイプそれぞれについて、回答者自身の選択行動を問うものと、社会的に望ましい選択を問うものとの2タイプ、合計で4タイプの調査を行い、相互に比較検討する計画であるが、現時点では集計に至っていない。
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