沖縄県辺戸岬にて採集したハナウミシダ(約10Kg)を抽出・液々分配して極性によって分画し、スフィンゴ脂質の粗フラクションを得た。 まず、棘皮動物の中でもウミシダ類に特徴的なスフィンゴリン糖脂質に着目し、スフィンゴリン糖脂質の基本構造であるスフィンゴリン脂質・イノシトールホスフォセラミドについて構造解析を行うこととした。既に構造決定しているニッポンウミシダ由来のイノシトールホスフォセラミド(CJP-1)を標準品として非水溶性脂質画分を各種クロマトグラフィーにて精製することにより精製し、ハナウミシダ由来のイノシトールホスフォセラミド(CSP-1)を得ることができた。NMR、MS、GC-MSによる構造解析の結果、CSP-1とCJP-1はセラミド部のコア構造は両者ともノルマル脂肪酸とスフィンゴシン型長鎖塩基から構成されるものであったが、CSP-1はCJP-1と比較して分子種を構成する成分の多いことが特徴であった。また、含量においてはニッポンウミシダの方がかなり高含量であった。 ヒトデ類ナマコ類といった他の棘皮動物のスフインゴ糖脂質のセラミド部は脂肪酸にノルマル型、α-オキシ型、そして長鎖塩基部にスフインゴシン型、フイトスフィンゴシン型と構造多様性があるのに比べて、ウミシダ類のイノシトールホスフォセラミドのセラミド部は単純な構成であると思われる。 CSP-1にさらにシアル酸を含む糖鎖が結合していると思われるスフィンゴリン糖脂質の存在も高極性フラクションよりTLCにて確認しており、今後これらの構造解析・生理活性について検討を進める予定である。 また、前年度より継続してウミシダ類と同じ棘皮動物に属するウデフリクモヒトデについてもガングリオシドについて構造決定を行い、得られた知見を論文投稿し、掲載された。
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