昨年度に引き続き、棘皮動物ウミシダ類に特徴的なスフィンゴリン糖脂質の探索を継続した。昨年度はハナウミシダ(Comanthina schlegeli)よりスフィンゴリン糖脂質の基本構造であるイノシトールホスフォセラミド(CSP-1)の単離・構造解析を行ったが、今年度はさらに高極性域に確認されていた成分を分離・精製して、CSP-2、CSP-3と仮称する2種の化合物を得た。これらの化合物はNMR、MS、GC-MSによる構造解析の結果よりCSP-2はCSP-1にシアル酸1分子が結合した構造であり、CSP-3はCSP-1にシアル酸2分子が直列に結合した構造であることがわかった。以前我々がニッポンウミシダ(Comanthis japonica)より得ているスフィンゴリン糖脂質は構成質CSP-2、CSP-3は9-OMe-NeuGcの他に9-OMe-NeuAcも構成成分として含有している点が特徴的であった。ウミシダ類のシアル酸は9位がメチル化されている点が非常に興味深い。現在のところ、CSP-2、CSP-3のシアル酸部は上記2種が混在しているため、さらなる精製を行いシアル酸部が1種である化合物も得られつつある。これら得られた化合物を用いて神経細胞を用いた生理活性の検討、さらに構造活性相関の考察を進める予定である。
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